耳の裏側に金時の唇が当たった。
ベッドの中、背後から緩くまわされた腕は胸のあたりまでを包み込んで心臓ごと土方の身体を温める。
その日はいつもより冷え込んで、
頬の冷たさに少し震えた土方の耳元で金時が囁く。
「……寒いの」
「少し……」
引き上げられた毛布の中で腕の力が少しだけ強まった。
ほんのわずかに拘束感を覚えて身じろぎしたが金時は一層抱きしめる腕の力を強めた。
首筋に唇が触れて、思わず吐息が漏れた。

「風邪ひかないでね」
優しげな声に
「ん……」
ゆるく返事を返せば抱く腕を器用にずらして半身を起こした金時の手がゆっくりと土方の顎にかかり、
そのまま唇をかさねられた。
ちゅ、と軽い音を立てて離れていく形の良い唇が名残惜しくて眼で追うと、金時が苦笑した。
「…朝からその気にさせないでくれよ」

起き抜けのあまり動かない頭では何と返して良いのか分からず、
瞬きをしている間に金時が身体を完全に起こし、そっと土方の身体を上向かせた。
白い天井、それから何かを堪えるような金時の顔、覆いかぶさったせいで綺麗な金髪が広がって、
それをぼんやり眺めている間にまた、唇を塞がれた。
「ふ…ぅ……」
長めのキスに息が上がった。
土方の唇に指で触れた金時がふふっと笑う。

「ねだってもいいかな」
「……今から?」

朝、は確かに身体がぼんやりと熱い日がある。
男としての生理現象で。
でもそれよりも勝って、秘め事は夜に行うもの、というよくわからない考えが土方にはある。
いつだったか、金時に告げたら軽く笑われてしまったが。
金時の腕がそっと腰に回され、パジャマの奥に忍び込んでくる。
そろりと撫でられて一瞬羞恥に頬が染まった。

「お伺いを立ててみようかな」
にっこりと笑われて余計に恥ずかしくなって顔を背けた。
身体は、多分金時に触れられればいつだってその気になる。
だから…それ以外を置き去りにしないでいてくれれば、大丈夫だ。
金時が嬉しげに土方の額を露にし、口付ける。
キスと首筋、胸への愛撫に段々と溶けていく土方の感情をちゃんと見計らって、
僅かな抵抗の後そっと脱がされてしまったむき出しの下肢に金時の手が這う。
それから優しい手がクッションを腰の間に入れてくれる。
少し楽になった姿勢に、しかし羞恥は消えない。
ベッドサイドにそっと仕舞われているゼリーを掌で温めた後、
ゆるゆると奥を探られて声が出る。
「ぁ………」
何度されても慣れない感触に声を殺せずに喘ぐ。
そんなところで快楽を拾えるなんて知らなかった。
指が自然に増やされて、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
息が上がる。
「…っはァ……」
「大丈夫、ゆっくりするから、力抜いてて」
ちゅ、ちゅ、と軽いキスをしながら金時が囁く。
怖くないよ、と繰り返されてやっと受け入れたこの行為。

爪の先を綺麗に切りそろえられた金時の指が、あわいの奥、
ある一点を掠めた瞬間に背骨ごと溶けてしまいそうな快楽が降って来る。

「あッ……やだ………!」
激しく髪を振り乱した土方の痴態を興奮を隠そうともしない顔で金時は眺める。
「ん、でも、ここは良いって言ってる」
金時がいやらしく囁けば土方の顔がさらに赤く染まった。
くちゅくちゅ音を立てながら土方を感じさせることだけを目的とするかのように、
金時の指が中を宥め、時折、晒された芯を擦って甘やかしていく。
胸の飾りを口に含まれ、
芯からぽたぽたと透明な液体が零れだした頃、
シーツを掴んで耐える土方の手を片手で優しく包みながら
金時の舌が土方の目尻を舐めた。
「…後で一緒にお風呂入ってくれる?」
その意味を聡い土方はすぐ理解し、僅かな逡巡の後、こくりと頷いた。
それを受けて嬉しげに、土方の痴態だけで十分に欲情していた金時は自身を軽く擦りあげた後、
真っ赤な顔で見つめてくる可愛い土方を安心させるように、にこっと少し笑って見せた。
ひたりと切っ先を添えられて、くぅんと子犬のように土方の喉が鳴った。
金時の鍛え上げられた肉体が惜しげもなく土方の前に晒され、
「ちから、抜いてね」
優しい声とは裏腹に凶暴な質量を持った雄が土方の内部に潜りこんで来て、
「ひ…ッ、ああぁッ!」
殺せない声を上げて受けいれる土方の眼には生理的な涙が浮かんだ。
「あ、あ、やだ……きんとき、…ひぅ…」
向かい合ってするせいで、金時の性器が入り込んでくるのが抱え上げられた腰、
視界の端に映って土方を居た堪れなくする。
挿入の痛みに少し力を失った芯を優しく包みこみ、あやす。
その度に少しずつ、奥が深く金時を受け入れていくのが土方にも分かって、さらなる懊悩を齎す。
ぐちぐちと音を立てて進入していく金時の性器と、
くちゅくちゅと音を立てて可愛がられる土方の性器、そのどちらもが、土方の薄い性欲にもちゃんと火を灯していく。
「ふぁ、あッ、あ………」
総て収めた後、土方の裸の胸に厚い胸板を沿わせて
「くッ……」
短く声を上げ、
金時が呻いた。
「ぁ…ハァ………ぅ…」
中に金時が入っている…そう思えば土方の身体は自然と熱を上げる。
ふと、いつもの優しいだけじゃない、雄の顔をした金時と目があって
土方の内部がびくんと艶やかに蠢く。
急な締め付けに金時は苦しげに笑うとごめん、と短く告げた。
え、と土方が瞬きをした直後。
腰に手を入れられ突然抱き起こされて、金時の腿の上に乗せられ、
「ッあああ!!」
自重で深く金時を咥え込んでしまった土方は無体な衝撃に呆気なく果てた。
そのすぐ後、強烈な締め付けに抗わず、
体奥の金時がどくん、と脈打ち熱い飛沫を撒き散らすのを土方は焼切れそうな意識の片隅で感じた。
解放の衝撃に痙攣し、熱さにひくひくと蠢く内部の締め付けを愉しむように金時の腰が僅かに揺れる。
一度達してもすぐに勢いを取り戻した金時に土方の目が僅かな怯えで揺れた。
恋人の怯えを軽いキスで宥め、両腕をしっかりと己の肩に回させた後、
太股に乗せた土方の腰を支えたまま何度も揺すりあげる。
その度、金時の体液が土方の中で泡立ち、卑猥な音を立てて土方を追い立てる。
「ひぁ、や、やだ、それ…や……あぅ…」
「うん、ごめッ…凄ェ気持ち、イイ……」
「………んぅ……ぁ…きんとき…も」
「うん、もっと呼んで……」
腰がぐずぐずに溶けてしまうような快楽にすすり泣きのような声を零したまま、
土方の整った指が金時の肩に爪を立てた。
痛みを物ともしない金時は土方の唇を時折啄ばみ、
「ぅ……ァ……」
「ん……すごくかわいい、ね……」
甘い睦言をささやいた。


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