天使のおひろめ
その日、突然屯所の玄関に横付けされた黒塗りの高級車は嫌味な光沢を放ち、
不吉な符丁のように空気を歪めた。
ゆっくりと降り立ったのは見廻り組局長、佐々木異三郎。
「佐々木局長……」
庭先でこひじの為に焼き芋を焼こうと頑張っていた近藤勲は、
芋片手にいつもの人好きのする笑いを少しだけ焦ったままに浮かべ、
何とかお引取り願おうと考えを巡らす。
が。
「あ!!」
ててて…と可愛らしい足音がして、
ひょこっとこひじちゃんが顔を出した。
視線の先、かわいらしい天使は服の裾をきゅっと握っている。
ああ、何てことだ。
そうだよな、気になるよな。
せっかくお芋焼こうとしてたのに不躾なオッサンだよな。
ホントごめんな。
一方、僅か数秒の沈黙の後、
佐々木の明晰な頭脳は高度に回転し結論を導き出す。
「数日前より土方副長のお姿が見えませんね」
分かりやすくあさっての方向を向いた隊士や近藤に佐々木は内心笑みを浮かべた。
土方というブレーンが不在では本当に取るに足らない。
「見廻り組にも例の新薬のサンプルが来ましてね、まぁウチは解析後に志願者が飲みましたが」
「…これはこれは、佐々木局長」
丁度外出していた山崎が、やはり瞬時に事の次第を理解し、
とりあえず近藤の芋を片付けさせ、
白々しく挨拶をする。
「とんだ不調法を。ご連絡いただければお出迎えいたしましたのに」
要するに『アポ無しで来るんじゃねェよ』と言いながら山崎は有能な監察らしく
ライバル組織の局長様を速やかに応接室に通したのだった。
※以下はサブちゃんのツイッターのTLである。
(sabu 局長
トシにゃん激萌!ギザかわゆす!!本物の天使なんだお!!
ぷくぷくほっぺ美味しそぉでらぶりー☆サブちゃん触りたかったのにひどいんだお!!
遠ざけられて傷ついたんだゾ!あの地味男ウザス!!抹殺してトシにゃんゆうかいしたいお!)
(sabu 局長
(メ▼ω▼)y-.。o○松平長官が浮かれてたお!!わかったお!!サブちゃんにはぜんぶおみとおしなんだお!お!お!)
(sabu 局長
エンジェルだお! あのきゅーとな睫ばさばさおめめは間違いないお→(*σ.σ)
トシにゃんはやっぱり天使だったんだお! 光源氏計画だお! お空に帰る前にサブちゃんがお嫁に迎えるんだお! )
(sabu 局長
バラガキどもには勿体無いお! トシにゃんは佐々木家のお姫様にするんだお(/^-^(^^*)/
佐々木十四郎ギザ萌え!ギザ似合うス! 記名捺印済の婚姻届用意してあるんだゾ!
超が付くエリートにぬかりはないんだお! トシにゃんは局長夫人になればいいお! 一生苦労はさせないお! )
所変わって万事屋。
「銀さん、何か表に携帯が落ちてたんですけど…」
「あぁ?んだそりゃ」
ここのところある理由で不機嫌な銀時はガリガリと頭をかきむしると、
胡乱げに携帯を見た。
「おい、面倒な予感がするから…」
捨てて来い、と言いかけたのを見越したように。
ピロリロリーンと間の抜けた音がした。
(sub 銀たんへ
はろー\(*^▽^*)/ さぶちゃんだお! 依頼があるんだお!
極秘情報!!組の屯所に天使がいるんだお! その子とデートしたいからそおっと連れてくるんだお!
みっしょんこんぷりーとしたら報酬はずむお!)
「…ギザウザス!!!」
佐々木の欲望は万事屋の主によって地面に叩きつけられたが、
主はこのとき重大な情報を同時に破壊してしまったのだった。
つづく…?
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